「三千万なら大学病院の助教授が来る。報酬高すぎ」
 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機 …実は中傷が原因…三重・尾鷲

医師確保へ一定の自信
産科で市長「前向きの感触」と報告

 尾鷲市の伊藤允久市長は15日開かれた市議会生活文化常任委員会(与谷公孝委員長)で、現医師との 契約が成立しなかった尾鷲総合病院の産婦人科について、「複数の医師と接触して前向きな感触を得ているが、着任の時期までには達していない。 もう少し時間をいただきたい」と報告。また、「現在の医師は10月15日まで分べんを受け持ってくれる。それまでには何とか医師を確保して 継続させたい」と述べ、医師確保に一定の自信をのぞかせた。

現医師10月15日まで

市長は委員会の冒頭で次のように報告し、委員の質問に答えた。
 2年目の更新に至らなかったが、現在の医師の厚意で9月中の出産予定に月末の初産も予想されるため、10月15日まで業務を続けてくれる。後任の産婦人科医師確保には現在、複数の医師と接触して尾鷲に来てくれるよう強く要請している。この1年、1人体制だったことの反省も踏まえて何とか複数医師の確保ができないか奔走しており、前向きな感触を得ているが、いつから着任してもらえるといったところまで達していない。
 12日には三重大に出向き、医師確保に向けて最大限努力していることを伝え、応援態勢が受けられるよう要望した。いずれにしてもこの地域で出産のできる状況を確保していくことは必要不可欠であり、不安を抱えている妊婦には大変申し訳ないと思っている。このままの状況がいつまでも続くとは思っていないので、もう少し時間をいただきたい。

枡田勇委員
次の医師が来るまで妊婦は不安で、ケアをどうするのか。次の医師が来るまで途切れた場合は費用の補助も考えているのか。
湯浅英男事務長
現在の医師が他病院への紹介状などで対応してくれている。
市長
10月15日までに後任の医師が決まれば継続できる。10月15日までは現在の医師が分べんを受けてくれる。一時的に休診となることも考えられるが、緊急的な補助は難しい。
枡田委員
妊婦の立場からも補助は必要だ。10月15日以降に出産予定の人もいる。
市長
10月16日以降の妊婦については現在の医師と個別の対応となり、われわれは継続できるよう次善の策を取っていく。
浜口文生委員
三重大や他病院などへ医師確保に努力していることはわかるが、もっと早く対応してもらいたかった。複数の医師に接触して確保できそうな希望も見えてきたと思うが、不安を感じている妊婦や市民のためにも具体的に報告してもらいたい。
 市長は12日に議長、常任委員長と三重大に出向いたということだが、その反応や感触はどうだったのか報告できないのか。先日の報道でも三重大の可能性が出ていたので妊婦や家族が期待している。記者会見を開いてでもリアルタイムに情報を出してもらいたい。
市長
昨年9月に医師が着任した以降も2人目の確保に取り組んできた。今回の契約決裂で急に探し始めたわけではない。12日に三重大の産婦人科教授に状況を報告して医師の派遣を要望した。教授の話から県立志摩病院も産婦人科医師不足で引き揚げた事情があり、2人目の派遣は当面無理なので、アルバイト的な応援医師の派遣を要望した。市でまず1人を確保すれば、休日や学会で不在の場合の応援医師の派遣に、教授は「尾鷲の状況はよくわかっているので、できる限り協力したい」と印象はよかった。
浜口委員
市民的に切実な問題であり、市長が医師確保にどう動いているのか注目されている。だからリアルタイムで報告すべきだ。教授は応援医師の派遣には好意的と受け取ってもよいのか。もっと言えば、三重大から尾鷲に具体的なボールを投げてほしい。新宮医療センターに近い紀南病院は3人体制だ。将来的にも尾鷲への配置構想があるのか疑問だ。
市長
リアルタイムに報告したいが、接触している数人の医師とはプライバシーを守らなければならない。交渉中の状況は報告できない部分が多い。教授は2人体制となるまで緊急的に応援医師の派遣には理解してくれた。将来的には三重大に医師が増えれば常勤の派遣も出てくるが、今の医師不足では難しいとの話だった。市が独自に確保するしかないと認識している。
   

大胆な医師募集も必要市長
 2人体制で再構築へ

浜口委員
県立志摩病院から産婦人科医師を引き揚げても、山田赤十字病院まで20〜30分。尾鷲には近くに産科はない。紀南病院に3人が常駐しているのだから1人を尾鷲に常駐してもらえないのか。今月中に後任医師のめどをつけないと継続には間に合わない。
市長
尾鷲と紀南でそれぞれ2人だったのが、統合で紀南に3人となった。教授は3人を2人にすることは考えていない。医師が増えれば将来的に考えるということだった。この1年、インターネットなどで公募してきたが、全国的に産婦人科医師が不足している状況で確保は困難。個別の情報から接触してきた。少なくとも5年間は安心して出産ができる産婦人科の再構築が必要であり、とにかく個々に接触して5年間は安心できる体制を取りたい。
浜口委員
三重大のサポートをベースに市独自で各地の医師会に打診したり、新聞広告を出すなど大胆に多少の費用をかけても市民に見えるかたちで医師確保に取り組んでもらいたい。
三鬼和昭委員
医師不足は認識しなければならないし、5520万円の報酬はわれわれ議会としても高い勉強となった。高額でも医師を確保して1年がたち、いま交渉している医師にも地元の強い思いが伝わっていると思う。三重大の応援医師派遣も大きな前進であり、今後も三重大と良好な関係を保つよう努力してもらいたい。議会にはできる限りの情報は提供してもらいたい。
市長
先日も内科教授が決まったので三重大にあいさつに出向き、教授から「尾鷲は三重大にとっても大事な病院」との話だった。10月から内科医師1人の増員も決まった。循環器では県内でも最優秀の医師と聞いており、三重大が尾鷲に力を入れてくれていると感じている。
 この1年間、産婦人科医師を探してきたが本当にいない状況で、全国的な争奪戦となっている。伊勢総合病院も京大が引き揚げ、人脈でどうにか確保した。それぞれにいろんな人脈をたどって医師を探している。砂の中からダイヤを探すような状況でも、10月15日までには何とか確保したい。私にとって至上命令と考えている。
三鬼和昭委員
5520万円を教訓に議会も執行部と歩調を合わせて議論ができるよう、市長はどしどし提案してもらいたい。
市長
何とか2人体制にもっていきたい。総合病院の給与体系に準じていくが、尾鷲で北勢や愛知県と同じ条件では来てくれない。来てくれるような動機づけの待遇が必要であり、少子化対策の目的でも一般会計から応援するようなかたちも考えていく。議会も理解してほしい。
三鬼和昭委員
医師の報酬はわれわれも理解している。報酬の根拠をきっちり示してもらえればよい。
中垣克朗副委員長
現在の医師にもう少し延長してもらえないのか。
市長
医師には10月末までの延長をお願いしたが、15日までにしてほしいということだった。それまでに後任医師を確保して休診にならないよう努力していく。
津村衛委員
今回の産婦人科問題で、地元が医師をどう支えていくのか受け皿の問題を痛感した。医師が動きやすい環境をどうつくっていくのか議論の場を確保してもらいたい。
市長
医師が確保できれば尾鷲で長く働いてもらうためにも病院の環境づくりが必要となり、市民もぜひ協力してほしい。
   
引用元:南海日日 9月16日(土)
 
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