「三千万なら大学病院の助教授が来る。報酬高すぎ」
 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機 …実は中傷が原因…三重・尾鷲

他医師の了解が先決
市議会 全協 産科医師の報酬交渉

尾鷲市議会全員協議会が25日午後開かれ、市長から意見を求められた尾鷲総合病院の産婦人科医師(55)の報酬額など更新契約について協議。今月で1年契約が切れる現報酬の5520万円から4800万円に減額した市長の提示額に異論は出なかったが、「他の医師の平均給与1500万円との格差が大きく、不満が残れば病院自体の存続も心配だ」と指摘し、「他の医師から意見を聞いて了解の上で最終判断をしてもらいたい」と慎重な対応を求めた。市長は「院長と相談して来週早々に産婦人科医師と最後の交渉をしたい」と答えた。

 全員協議会の冒頭で、市長は「21日の全員協議会で産婦人科医師の報酬額について双方の意見がかみ合わない交渉経過を報告した。昨年は6万3千人の署名を受けて緊急的な対応をしてきたが、今年の交渉では産婦人科の出産数、外来患者数、診療報酬額、労働条件のほか、他の医師との格差も十分に考慮する必要がある。三重大との関係や社会的な影響など多面的にとらえ、議員の意見を聞いて最終的に判断したい」と述べ、意見を求めた。

大川道義議員

4800万円に減額した理由に
1、出産数の減少
2、赤字の増加
3、他の医師の理解が得られない
としているが、医師が2人から1人となり、1人当たりだと出産数が増えているので理由にはならない。
5520万円の報酬が赤字の原因なのか。
市長
産婦人科で3800万円の赤字が出ている。
大川議員
医師確保には赤字があるのは当たり前であり、全国的な医師不足の状況で尾鷲によく来てくれたくらいだ。赤字を減額の根拠にするのはおかしい。市長は5520万円では「他の医師の不満が爆発する」との説明だが、そうなると病院を残すのか産婦人科を存続させるのかの話になる。4800万円は院長と協議した上で、「他の医師にも了解してもらえる」と判断した額なのか。
市長
4800万円は院長とは相談していない。
大川議員
それではだめだ。
湯浅英男事務長
事務局から市長に4800万円を提案した。その前に院長とも相談して金額は明確には示さなかったが、「とにかく5千万円以下に抑えたい」との話はしている。
大川議員
他の医師が4800万円を認めるのならその額で契約を進めてもらいたい。そこをきっちり詰めないと問題が尾を引くことになる。
市長
医師の感情は強い。この1年で複数の医師から「基礎データに基づいた納得できる査定を」と強い直訴も受けている。その上で、政治的判断で来てもらったのだから例外的な報酬もやむを得ないとの認識はしてもらっている。
大川議員
院長と詰めた話をしないと不安が残る。
湯浅事務長
他の医師の情報や院長の話は把握しているが、4800万円は交渉中で決まった額ではないため、他の医師には話していない。5520万円から減額することは話している。
大川議員
病院が存続できるかどうかの大事な部分であり、他の医師が了解すれば私も4800万円には賛成だ。それがないと話にならない。月1回の休みを確保できる見通しはあるのか。
市長
この1年で年末だけ休みの応援医師を確保できただけ。厳しい状況だ。
大川議員
4800万円に休日分の時給7千円を上乗せすると5500万円を上回る可能性もある。そこをはっきりしないと他の医師の理解が得られない。
市長
三重大に提示している応援医師の時給は7千円。医師の希望は時給1万円を超えると思う。応援医師がいない場合は数百万円の上乗せとなるが、5520万円を超えることはないと思う。
大川議員
他の医師が理解してくれることを大前提に、4800万円と月1回の休みを保証する条件で進めてもらいたい。
市長
21日の全協後、他の医師から意見を受け、「きっちり査定した代価ならやむを得ない」との話だった。すべての医師が了解してくれるかどうかはわからない。話がつけば院長とも相談して医師を説得したい。
田中宜哉議員
4800万円で他の医師が納得するのか疑問だ。5520万円との差は720万円で少額ではないが、市民の意見はその差が問題ではない。たとえ5520万円でも1年間やってもらい、その間に妊婦に不安を与えないよう存続に取り組めばよい。昨年、私も他の医師の感情を指摘したが、市長は「それは大丈夫」と言った。その部分がクローズアップされ、病院自体の問題となれば大変なことで、産婦人科がなくなってもやむなしとの判断も出てくる。4800万円で市長にげたを預けることになるが、他の医師にあつれきがあれば断念もやむを得ない。
市長
4800万円に月1回休日分48時間の時給で5500万円近くになる可能性がある。医師の要求だと6千万円近くとなり、他の医師に説明責任がつかない。
田中議員
他の医師とのバランスを十分に考慮しないといけない。
   

市長の責任で決めろ 議会に示す手順間違い

真井紀夫議員
 3月と6月議会で出産を迎える妊婦や家族のためにも、次の契約を早く決めるよう市長に求めた。報酬額は執行権であり、切迫した時期に議会に持ち込まれたのは残念でさらしものにされた。市長の責任で始末すべきで、委員会や全協に相談する問題ではない。まず医局と相談した上で交渉すべきだ。医師を追い込むような交渉もおかしい。
市長
執行権の範ちゅうというのはありがたいが、医師との交渉で溝が埋まらない状況もあり、議会の意見を聞きたいと申し入れた。責任を議会に転嫁するつもりはない。
真井議員
市長の考えは間違っている。責任はしっかり取らないと病院運営に信頼もできない。
市長
もっと早い段階で報告したかったが、データの集計で7月中旬からの交渉となった。医師側の条件はもともと手取り3800万円から始まっている。4800万円は精いっぱいの数字で来週早々に最後の交渉をしたい。
真井議員
議会は5520万円の予算を認め、その中で市長が額を決めるのは執行権だが、それだけでは済まない。医局との関係や三重大との関係もある。三重大はどう思っているのかは知らないが、県内の産婦人科医師の待遇にも影響してくる。尾鷲は三重大あっての病院だ。他の医師や三重大の意見も踏まえて交渉しないと、政治的判断で決めるべきではない。土壇場になってこの状況では情けない。
村田幸隆議員
4800万円を他の医師が了解する確証が得られていない状況で、議会に「どう思うか」と問われても判断しにくい。4800万円を議会に示す前に他の医師の意見を聞き、納得してもらうことが重要だ。医師の平均給与1500万円と5500万円ではぎくしゃくするのは当たり前で、そこをクリアしないとだめだ。まず他の医師の意見を聞いて報酬額を設定した上で議会に示すのが筋だ。本人が納得しても他の医師が納得しなければ意味がないし、三重大の考えもあるはずだ。三重大の産婦人科教授や他の医師とも話をした上で議会に示されれば議論もできる。それが手順だ。
 休日を上乗せすれば5千万円以上となり、それで他の医師が納得するのか疑問だ。市長の熱意は手順が狂っているので混乱している。他の医師と積極的に話をして病院を存続させるのか産婦人科なのかを十分に考えて最終判断をしてもらいたい。
市長
いま医師1人ひとりに相談すれば4800万円を下回る額になると思う。この1年間、医師の努力で7月までに139人の命が生まれ、母体にも問題はなかった。極端に低い額だと交渉にならない。それに1年の功労も含め、院長が他の医師を説得できる最大額が4800万円と考えた。
村田議員
4800万円も5500万円でも仕方がないとの思いはある。どこの病院も医師不足で悩んでいる。国がやってくれないのなら病院をなくすことはできないのだから、地域で血みどろになってもやらなければならない。6千万や7千万の法外な額となれば別だが、多少の不満があっても他の医師が「仕方がない」との額であれば、地域のためにはやむを得ない。慎重に対応してもらいたい。
神保美也議員
産婦人科医師の報酬は病院の基本方針にかかわる問題だ。昨年は6万3千人の署名をバックに緊急避難的な政治判断で1人を確保し、あと1〜2人の確保を目指してスタートした。1年たっても応援医師さえ確保できない。4800万円での交渉となるだろうが、1人の医師でいつまで続けていくつもりなのか。安全安心には2人以上の態勢が必要で、近い将来には三重大の3人態勢の方針に従うべきだ。5千万円なのか1億円かかるのかは病院とは切り離し、妊婦に安全安心を保証する対策をしっかりやればよい。
大西正隆議員
4800万円で他の医師が納得すればよいが、できればもう少し下げた額で残ってもらいたい。
村田議員
総合病院は問題を抱えて苦労していることもわかるが、安易な買い物をして議会に突然出してくるような政治手法は慎んでもらいたい。
南靖久議長
議会は産婦人科の存続で一致しているが、報酬額は18人の医師の理解が大前提となり、病院自体の存続を最優先に考えなければならない。院長ら18人の医師と相談した上で最終決断をしてもらいたい。産婦人科の存続を願う会の代表2人は「4800万円で理解が得られれば続けてほしい」と「現状の5520万円で1年やってもらい、その間に今後の対応を考えてもらいたい」との意見だった。
浜口文夫議員
市長は最終判断の前に、院長らときっちり話し合いの場を持つのか。
市長
週明けに院長らと話の場を持ちたい。
   
引用元:南海日日 8月27日(日)
 
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