「三千万なら大学病院の助教授が来る。報酬高すぎ」
 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機 …実は中傷が原因…三重・尾鷲

妊婦や市民に戸惑い
産科医師契約決裂 行政や議会不信も

  尾鷲総合病院の産婦人科医師が10月から不在となり、1年で再び出産ができなくなる可能性が強まった。
昨年9月に5520万円の報酬で着任した男性医師(55)との契約が8月31日で切れ、9月末で引き揚げる。
市長は31日の緊急記者会見で「5520万円の最終的な報酬額の提示で折り合いがつかず、医師の心身的な疲労もあって契約の更新には至らなかった」と発表した。出産を控えた妊婦や市民の間に戸惑いや、行政と議会に対する不振の声も強まっている。

 市長は31日の記者会見で、
「議会や産婦人科の存続を願う会、院内医師の意思から『緊急避難的にはやむを得ない』と判断して4800万円に月1回の休暇分上乗せから最終的に5520万円を提示したが折り合いがつかなかった」
と述べ、
「金額だけでなく、医師にとってこの1年、市民に望まれて尾鷲に来たことを心の支えに頑張ってきた。25日の市議会生活文教常任委員会の発言に、気持ちの糸が切れたということだった。 最長で来年3月まで残ってくれる意向だったが、精神的なショックから9月末まで1ヶ月が限界との申し入れだった」
と話した。

 医師が着任した昨年9月から今年8月まで、1年間の出産は152人。9月の出産予定が12人。9月の出産予定が10月にずれた場合でも責任を持って取り上げ、その時点で引き揚げることになる。
 10月8日に出産予定の妊婦(31)は
「10月から次の医師が来てくれる保証がない限り、いろんな負担が大きくても松阪市の病院に転院を考えなければ…」
と戸惑いを隠せない。紀北町紀伊長島区に住み、実家は尾鷲市内。3人目の出産で上に4歳と間もなく2歳になる子どもがいる。
「出産時には子ども2人を実家でみてもらえると安心していたのに…」
と話していた。

 また10月中旬に妻の出産を控えた男性は、
「信頼関係もできて安心して出産に臨めると思っていた医師がいなくなることに、妻は『どうしよう…』と涙を流した。昨年の署名運動も市政に届かなかったのか。行政は自分のまちで出産ができない女性の不安を考えたことがあるのだろうか。議員も企業代表のようで市民の代表ではないことを改めて認識させられた。不安と怒りしかない」
と不信感を募らせる。

 昨年6月で尾鷲総合病院の産婦人科が紀南病院に統合され、非常勤の外来診療で出産ができなくなった。産科の再開を求めて6万3千人の署名活動を展開、三重大や県に訴えた「紀北地区に産婦人科の存続を求める会」の浜田捷穂代表は
「これまでの報酬5520万円でできれば残ってほしかった。市長の記者会見で、金額だけではなく、議会の発言など医師にとって心情的な重圧に耐えられなかったのも原因だったと聞いて非常に残念。10月以降に出産を予定している人は気の毒。政治的な問題ではなく、早く後任の医師を確保して地元で安心して出産ができる産科を存続させてほしい」
と話していた。

 25日に開かれた市議会生活文教常任委員会で、一部議員が「市長が提示した4800万円は他の医師の3倍以上でむちゃくちゃな額だ。3千万円で公募すれば大学の助教授クラスが飛んで来るという話もある。風聞として産婦人科医師の開業時の話がいろいろ入ってくる。話しにならない高額だ」などと強く指摘する発言があった。

引用元:南海日日 9月2日(土)
 
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