「三千万なら大学病院の助教授が来る。報酬高すぎ」
 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機 …実は中傷が原因…三重・尾鷲

医師2人の内定を報告
議会で市長 尾鷲総合病院

 尾鷲市の伊藤允久市長は12日開かれた市議会の生活文教常任委員会と全員協議会で、尾鷲総合病院産婦人科の後任に男性医師(50)の内定を報告した。市長は「県内で開業していた三重大医学部出身。今月19日に着任する。身分は他の医師と同じ勤務医となり分べん手当など含め年間給与で約2800万円。給与とは別途に5年以上の勤務が見込まれるので市の一般会計から招へい奨励金として5000万円を支給したい。来年4月には県外の勤務医(65)も内定しており、2人態勢となる」と報告。議会からは「執行部や病院関係者の努力が実った」と評価し、招へい奨励金の創設にも異論なく了承した。

奨励金500万円を了承

 市長は委員会と全協で次のように報告した。
 今回、尾鷲総合病院の産婦人科に2人の男性医師から内諾が得られた。1人は県内の医師で今月19日に着任する。昭和57年に三重大医学部を卒業して同大学で勤務のあと開業(津市)していたが、諸事情のため閉院。尾鷲市の職員として勤務してくれる。もう1人の医師は県外の勤務医で、着任は来年4月の予定。
 来春には2人の医師がそろい、これで昨年から目指していた複数の医療体制が確保でき、三重大にも応援態勢の確立を要望している。これらがそろえば市民に本当に安心してもらえると思っている。産婦人科を休診せずに済んだことは現医師の理解と協力があったことに感謝しており、後任医師との引き継ぎで今月末までの勤務となっている。
 市民や特に妊婦にさまざまな不安を与えていたが、ようやく医師が着任することになった。産婦人科医師の確保は昨年から大きな社会問題にまで発展している。今回の医師就任にあたっては地域で安心して出産ができる状況を確保するため、5年以上の勤務が見込まれる医師に対し、産婦人科医師招へい奨励金を創設したい。地域全体の問題であり、地域医療安定の意味からも病院事業会計でなく、一般会計からの助成を考えている。

 生活文教常任委員会と全員協議会での質疑要旨は次の通り。

三鬼和昭議員
衛生費の保健総務費補助金要綱の一部改正で奨励金を支給するが、この際、金額を明らかにしてもらいたい。
宮本忠明
福祉保健課長
5年以上の勤務が見込まれる産婦人科医師に500万円を限度として支給したい。
三鬼和昭議員
支給方法はどうなるのか。
宮本課長
今月19日の採用となるので、それまでに支給するのが妥当だと思う。県にも問い合わせたが、あまり事例がないものの違法の根拠は見当たらないとのアドバイスを受けている。
三鬼和昭議員
産婦人科の医師確保にはこの1年、困難な状況が身にしみている。そのためにも奨励金は理解したい。
三鬼孝之議員
全国的に産婦人科医師が不足して社会問題となっている。それでも来春には2人の医師が確保できた。市長や病院の努力で奇跡に近く、地元の妊婦も安心している。努力に感謝し、奨励金の創設にも賛成したい。適用範囲は産婦人科医師に限られるのか。500万円の支給は先決処分となるのか。
市長
19日に着任するのでそれまでに支給したい。先決処分でお願いしたい。三重大からの医師派遣がなくなり、市独自の医師確保なので産婦人科医師に限定したい。
湯浅英男
病院事務長
医師の特殊勤務手当規則も今月から一部改正した。月額で院長手当44万円から54万円、副院長手当34万円から44万円、部長と医長手当がこれまでの25万円から部長35万円、医長30万円、それに産婦人科医師の分べん業務手当として出産1件に対し10万円を新設した。
三鬼和昭議員
現医師の報酬5520万円が他の医師との格差で問題となった。今回の手当は格差の是正も考えた見直しなのか。尾鷲と紀南病院との待遇差はどうなったのか。
市長
これまでも尾鷲の待遇は県内の公立病院で通常レベルだった。過疎地の特別手当を支給している紀南に比べて低い。その是正で紀南レベルに近づけ、医師の受け入れ体制を強めた。県内でも尾鷲の待遇は劣っていない。
枡田勇議員
2人態勢となる来年4月まで1人の勤務となり、三重大の応援医師派遣は具体的に決まっているのか。
市長
先月、三重大に出向いて学長、院長、産婦人科教授に2人態勢まで応援医師の派遣を要望した。来週早々にも三重大に出向いて後任医師が月2回の休みを取れるよう派遣を要請したい。
枡田議員
三重大は応援医師の派遣を確約しているのか。
市長
産婦人科教授に要望して協力してくれる可能性が高いと受け止めている。後任医師も着任までに産婦人科教授と会って具体的な話をすることになっている。
大川道義議員
医師が確保できたことはありがたい。給与や手当にも基本的に賛成したい。2800万円の給与内訳を説明してもらいたい。
大倉良繁
病院総務課長
2800万円は定額ではない。特殊勤務手当や地域手当、分べん業務手当を加味して約2800万円弱となる。給料は1635万円で他の医師と同じ。現医師で年間150件の分べんがあり、2人態勢となるので約70件を見込んだ分べん手当で約700万円。手当の積み上げで2800万円程度になる。
大川議員
後任医師との契約は5年なのか。
市長
通常の医師採用となるので、65歳の定年まで勤務してほしいと願っている。契約ではない。
大川議員
2800万円で他の医師の理解が得られたのか。
湯浅事務長
市長が院内の医師と懇談をしている。
南靖久議員
全国的な産婦人科医師不足の中で、来春には2人態勢となる。市長や病院関係者の努力に感謝したい。
   
引用元:南海日日 10月13日(金)
 
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