「三千万なら大学病院の助教授が来る。報酬高すぎ」
 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機 …実は中傷が原因…三重・尾鷲

毎日新聞

産婦人科不足:尾鷲市総合病院、津市内の開業医を起用

 三重県尾鷲市の市立尾鷲総合病院で産婦人科医が不在となっている問題で、同市は津市内で開業している産婦人科医(50)を後任として起用する方針を固めた。年間報酬は2800万円程度で、今月19日に着任する予定。
 同病院では、産婦人科医の派遣元である三重大医学部が医師減少を理由に常勤医師2人を引き揚げたため、昨年6月から分べんを中止。地域の妊婦は遠方の病院で出産するしかない事態となった。尾鷲市は昨年9月、年間報酬5520万円で津市から別の産婦人科医を招いたが、2年目の契約更新の際、報酬面で折り合わず、不在の状態になっていた。
 同市は来春ごろ、県外の勤務医をもう一人確保する見通しで、できるだけ早期に産婦人科の2人体制を確立したいとしている。【七見憲一】
(2006年10月11日 2時17分)

中日新聞 9月16日

【牟婁】 「安心してお産できる環境を」
尾鷲総合病院産科医が語る

 尾鷲市との契約延長交渉が決裂した尾鷲総合病院の男性産婦人科医(55)が、本紙の取材に応じ、1年間の勤務状況や契約の経緯、現在の心境などを語った。(鈴木龍司)

 −1年間を振り返って
 妊婦や助産師との信頼関係ができつつあっただけに交渉の決裂は残念。150人を超える赤ん坊を問題なく出産させてきたし、休みも年末の2日間だけだった。そんな中での4800万円への減額提示は、医師として許せなかった。

 −5520万円という報酬額が話題になったが  金額は私も高いと思う。しかし、産婦人科医が減っている今、地方が医師を確保しようと思ったらこれくらいは払わないといけないというメッセージにはなった。この金額の倍もらっても行かないという医師もいる。

 −産婦人科を1人で切り盛りしてきたが
 産婦人科の仕事が大変なのは覚悟しているので、体力的には問題なかった。だが、契約時の約束では、三重大からの応援医師が来るので毎週の土日曜日休みは保証できるとのことだった。

 −昨年の契約の経緯を教えてください
 昨年7月半ばに、伊藤允久市長と初めて会った。31日の夜中に市長が電話で「明日の市議会で医師を発表しなくてはいけないので何とか頼みます」と言ってきた。開業していたので考えたいこともあったが、そこまで言われたら医者としては断れなかった。

 −後任の医師確保も難航しているようです
 私との契約も急場しのぎでさまざまな問題点が出た。市長は「緊急避難的措置で高額報酬になった」というが、私はつなぎ役だったのかと思えてくる。大切なのは、妊婦が安心してお産できる環境をつくること。私との交渉の過程でも、市が妊婦や市民の声を聞いていれば違う結末になっていたかもしれない。

◇報酬は2800万円が上限 市長説明
 尾鷲総合病院の産婦人科医との契約が延長できなかった問題で、尾鷲市は15日、医師が引き上げる10月以降の後任が現時点で見つかっていないと発表した。
 伊藤允久市長は市議会生活文教常任委員会で「複数の医師と接触し、前向きな感触を得ているが、着任してもらえるというところまでは達していない」と説明した。
 現在の医師は9月末で退任の見通しだったが「医師のご厚意で、10月15日まで業務を延長していただけることになった」とした。しかし、15日以降の後任が見つからなかった場合は休診せざるを得ないという。
 市議からは「後任が見つからなかった場合、出産予定者に補助金を出すなどの対策はしないのか」などと質問。市は「補助金は考えていない。医師が個別に紹介状を書いて対応する」と答えた。
 委員会終了後、現時点で接触している医師の報酬額について伊藤市長は「病院職員の給与ベースに、各種手当や少子化対策などの名目を加え妥当な金額を支払う」とした上で「2800万円くらいが上限になるのでは」との見通しを示した。 (鈴木龍司)

(2006年9月16日)中日新聞

スポニチ 9月1日

尾鷲市で産婦人科医消滅の危機

 三重県尾鷲(おわせ)市の市立尾鷲総合病院が雇用していた唯一の常駐の産婦人科医(55)との継続契約で交渉が折り合わず、市は31日、雇用を断念した。早ければ10月にも市内から産婦人科医が消える可能性があり、市民からは「これでは子供を産めない。ますます高齢化が進んでしまう」と危ぶむ声が出ている。
 尾鷲市が市内の産婦人科医を失う危機に再び陥った。昨年7月、市立尾鷲総合病院に医師を送っていた三重大が、付属病院の医師不足を理由に派遣を中止したことを受け、市は独自に津市の男性開業医を1年契約で雇った。同9月から医師は24時間、病院に常駐し、夜昼問わずの出産に備えた。この1年間でこなした出産は152件(病院調べ)で、休みは年末の2日間だけだったという。

 今回の継続交渉で市は年間報酬額4800万円を提示。医師側は現状維持の5525万円と月1回の週末連休などを求めていた。市が条件面の見直しを示したのは、医師の年間報酬額がほかの医師に比べ約3倍も高額だったため。病院関係者らからも批判の声が上がっていた。市は最終的に報酬面で譲歩したものの、休日問題などで折り合えず、医師から「心身ともに疲労した」との訴えもあり、結局交渉は決裂した。

 同病院では今月に出産を控えている妊婦もいることから、医師に1カ月間に限り雇用延長を了解してもらうという緊急措置で対応。10月以降の出産予定者については「他の病院を紹介していくことになる。この1カ月の間に新しい医師を早急に見つける。休診にしたくない」としている。

 出産できる最寄りの病院は約45キロ先。峠道で、同地区は年間降水量が多いことでも知られ、大雨が降れば道路は通行止めになってしまう。三重大が医師派遣の中止を決めた際に署名活動を行った「紀北地区に産婦人科の存続を願う会」の久保田忠利さんは「医師は評判も良かった。せっかく出産できる状況が整ったのに非常に残念。会では最善策を協議していく」と話した。

(2006年9月1日 スポニチ)

読売新聞 9月1日

尾鷲の産科医 不在に 来月から
契約更新 不成立

産婦人科医不足から昨年、年間5520万円の報酬を支払って津市の開業医を招いていた三重県尾鷲市で、再び産婦人科医が不在になる恐れが出てきた。市は31日、この医師との1年契約の更新が、不成立に終わったことを明らかにした。医師は事実上、無休の24時間勤務で、休みも年間2日間だけ。疲労が激しく、辞退したとみられる。現在、後任の医師は見つかっておらず、10月以降、再び産婦人科医不在となる可能性が高くなった。 医師訴え 「休み年2日だけ」
 同市内では、市立尾鷲総合病院が唯一出産ができる病院だったが、昨年7月、三重大が産婦人科医の派遣を打ち切って不在となったため、市が同年9月、開業医を常勤医師として招いていた。

 しかし、病院の仮眠室を改装した部屋に泊まり込みで、休みは大みそかと元日に取得できただけ。しかも、患者があれば24時間対応を迫られるため、医師は契約更新に当たって、同額の報酬に加え、月1回の週末休暇(3日間)と、取得できなかった場合の手当支給を要請した。

 市は報酬を、これまで通りに据え置くことに同意したものの、休日については、代替要員がいないことから、これまで通りの勤務を要請し、手当の支給も難しいと回答した。
 直接交渉に当たった伊藤允久市長によると、「医師は心身ともに疲れ、『頑張る気持ちが切れた』と話している」という。

 産婦人科医が不在となると、同市の妊産婦は車で約1時間の公立紀南病院(三重県御浜町)か、民間病院のある松阪市まで2時間かけて通わなくてはならなくなる。

 尾鷲市の状況について、厚生労働省医政局総務課では「休みの日数は労働基準法の問題だろうが、ミスを誘発する恐れがあり、好ましくない。不足する産婦人科や小児科の医師については、各都道府県に対し、人員などを集約化し、効率的に対応するよう通知を出している」と話している。

(2006年9月1日 読売新聞)

尾鷲市 産婦人科医問題 不安募らせる市民
地元で出産できなくなる…

たった1人の産婦人科医の契約更新が成立しなかった尾鷲市立尾鷲総合病院 尾鷲市立尾鷲総合病院の産婦人科医の契約更新がなされず、10月以降、同市で出産ができなくなる可能性が高まったことで、市民は不安を募らせている。

 昨年、三重大が産婦人科医の派遣を取りやめる方針を示したことを受け、存続を求めて署名活動を行った「紀北地区に産婦人科の存続を願う会」の浜田捷穂(かつほ)会長(63)は「地元で出産できないと、妊婦にも家族にも負担が大きい。本当に残念」と肩を落とす。同会では数日中に、対応を検討する方針だ。

 契約更新を辞退した開業医がこの1年間にとりあげた赤ちゃんは約150人にのぼる。8月に同病院で長男を出産した千種由起さん(27)は「切迫早産で入院しましたが、地元の病院だったので安心でした。もう1人ほしいけど、近くに病院がなくなると、精神的に不安です」と顔を曇らせた。

 県内の市では、鳥羽市で産婦人科が不在となっているが、同市の場合、離島を除いて30分余で伊勢市の産婦人科に通える。一方、尾鷲市では、産婦人科医が不在となると、同市や紀北町の妊婦はカーブのきつい峠道を通り、松阪市や御浜町の病院に通わざるを得なくなる。

(2006年9月1日 読売新聞)

中日新聞 9月1日

来月以降休診も 三重・尾鷲市、産科医との交渉決裂

 「6万3000人の署名でともした光が、わずか1年で消えてしまった…」。尾鷲市が31日、5520万円の報酬で確保した尾鷲総合病院の産婦人科医との契約延長交渉の決裂を発表したことで、地域の妊婦や住民に戸惑いと落胆の声が広がっている。 (鈴木龍司)

 伊藤允久市長はこの日の会見で、30日夕の男性医師(55)との最終交渉について説明。「市として提示額を現行の5520万円まで譲歩したが、休日かそれに見合う補償の部分で折り合いが付かなかった」とした。また、男性医師が「心身ともに疲れ、休みたい。一部の議員の批判的な発言で気持ちの糸が切れてしまった」と話していることも明かした。

 市長は「9月の出産予定者(12人)は男性医師が責任を持つと話している」としたが、現段階で発表できるような後任候補は見つかっておらず「最大限努力するが、10月以降は休診になる可能性が極めて高い」との見通しを示した。ただ後任候補の何人かとは既に接触しているという。

 また、これまで男性医師が1人で切り盛りしてきた産婦人科の体制については「2−3人でやっていかないと、医療事故の危険も含めて厳しいのではないか」と語った。

 同病院は、9月の出産予定者以外には、ほかの病院への紹介状を書くとしているが、妊婦の不安は消えない。尾鷲市内に住む妊娠5カ月目の女性(32)は「産むこと自体が大変なのに、病院を変わることで新たな心配もしなくてはいけない」と戸惑いを見せる。その上で「男性医師は、人柄もよく、信頼できる人だった。条件交渉だけで決裂しましたという市の報告には納得できない」と行政への不満ものぞかせた。

 署名活動を展開した「紀北地域に産婦人科の存続を願う会」の浜田捷穂代表(63)も「妊婦やその家族から『お医者さんを呼んでくれてありがとう』と言ってもらったのに、突然のことで残念」と肩を落としていた。

  <交渉の経緯>  8月末日の契約切れを前に、7月から続けられた。市側は、給与面などほかの医師との格差や出産数の減少などを理由に4800万円への減額を要求した。しかし、男性医師は過酷な勤務実態を理由に、現行額の維持と月1回の週末休みかそれに代わる補償を求め、交渉は難航していた。

(2006年9月1日)中日新聞

CBCテレビ

尾鷲の産婦人科医交渉決裂

三重県尾鷲市で唯一の産婦人科の医師が契約更新で市と交渉が決裂、このため尾鷲市では10月から産婦人科医がいなくなる可能性がでてきた。
三重県の尾鷲総合病院では、三重大学医学部から産婦人科医の派遣を打切られ、去年55歳の男性医師と年間5520万円の報酬額で契約を結んた。
2年目の契約更新に向け、尾鷲市と男性医師のあいだで交渉が続けられてきたが、尾鷲市が年間の報酬額を減額し4800万円を提示したことに対し、男性医師は現在の報酬額の維持や月1回の休日を補償を訴えたため交渉は決裂した。
(31日 16:27)

2005年10月17日に放送された中京テレビの特番

 
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